アフリカへ行く前に,健康診断をし,予防接種を受けました。
健康診断で,医師は淡々と「メタボ直前」「糖尿病直前」と話してくれました。
そうして,「一線を越えたら一緒に対処していきましょうね」と暖かみのある,どことなくヒンヤリしたお言葉を頂きました。
基本的に,「運動をする」「食事を改善する」といった方向になるそうです。
医者の話を聞いたのですが,運動量を増やすことはまずできそうにありません。
大変だからです。
大変なことを平気でやりのけられる強い精神力があったのなら,私の人生は今頃,もっとすごくなっていたか,途中で事切れていたと思います。
では,食事改善はどうか。
これは基本的にうまくいきません。
人間の原動力である好き嫌いのど真ん中の取り組みだからです。
好き嫌いは,その全体を落ち着かせることはあっても,好きなモノを止めたり,嫌いなモノを無理したりというのは,しない方がいいと私は思っています。
自分に嘘をつき続ける生き方を,自分の内部で行う事になるからです。
それに,食事改善でうまくいったという話を友人から聞いたことがありません。
ということで,私の場合は両方ともダメだろうと行き着きました。
そんなとき,フッと頭に回ってきたのは,「噛めばいい」と言うことでした。
「良く噛んで食べる」
これは運動より軽く,好き嫌いとも無関係。
軽くて楽なのです。
こういうのは良いです。やれると感じてきます。
その上,子ども達にもそう教えてきていたので,やってやれないことは無かろうと思いました。
思い立ったが吉日,その日の夕飯から,噛む・噛む・噛む・噛む・・・・・・。
しつこく,粘り強く噛むようにしたら,これがすごい。
まず,食事の量が減りました。
良く噛んで食べていると,腹八分目の手前あたりから腹が満たされてきます。
ですので,3割ぐらい食べる量が減りました。
更に驚いたのは,腹が減らないのです。
満腹になるまで食べたときには,しばらくすると元気よく空腹感がやってきたのですが,七分目・八分目では腹が大して減ってこないのです。
そんな体験をして,ルワンダへ向かう飛行機の中,貝原益軒の『養生訓』を少し読みました。
良いことが,書いてあります。
「胃の気とは元気の別名なり。
沖和の気なり。
病はなはだしくても,胃の気のある人は生く。
胃の気なきは死す。」(p50 岩波文庫)
元気というのは,胃を快調にすることがその根本だったのです。
それは食べ物を胃に優しい形にして送り込むことなのです。
良く噛んで,食べ物を小さくつぶし,唾液と十分混ぜてから飲み込むと,それが胃に優しいのです。
良く噛んだ食べ物が胃に送られると,胃は嬉しそうに活動をし体中に良い案配にあれこれ巡らせてくれるのです。
体全体が元気になるのです。これはいいです。
難点もあります。
良く噛むと,食事に時間がかかります。
早飯でないとならない人には向きません。
また,口の中に食べ物がずっと入っているので,食事中の歓談がままなりません。
昔の人が黙って食事をすることを作法としていたのは,こういう理由があったのようにも思います。
見方を変えると,食事中に歓談を勧めることは,良く噛まずに飲み込めという指示がそこに横たわっているとも言えます。
これでハッキリしてきたことが2つになりました。
「姿勢を良くしたいなら,腰骨を立てる」
「体を元気にしたいなら,良く噛む」
当たり前の作法を実行に移せて,とても楽しいです。
これから先の人生,楽しみが少し増えたような気持ちになっています。
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