【横山験也のちょっと一休み】№.3097
春に出した『「夢中で算数」をつくる教材アイディア集2』の「あとがき」に、明治初期の算術書『筆算通書入門』から引用した画像を載せています。
筆算における、とても珍しい「繰り上がり」に関する画像です。
その『筆算通書入門』は、この本です。
夢中で算数の本にも書きましたが、この本の監修者は福田理軒です。当時の日本を代表する算術の先生です。
ですので、他の類書より、その記述に質の良さを感じています。
今日は、夢中で算数2に続く、珍しい筆算の話を1つご紹介しましょう。
筆算をすると横に長い線を引きます。
この線の名前をご存知でしょうか。
私は横に引く線なので、ごく自然に「横線」と呼んでいました。
でも、これは単なる見た目の呼び方です。
その形状が横に長く伸びている様子を言い表したにすぎません。
筆算とのつながりがありません。
この本には、「界線(かいせん)」と出ています。
「界(さかい)の線」という意味です。
上の世界と、下の世界は意味が違い、その違いの境目に引いた線という意味になります。
今の時代は、筆算が珍しくも何とも無いので、線の意味などは誰も考えません。
しかしながら、明治の初期は西洋から筆算が輸入されたばかりの時代です。
書き方、手順など、どれもこれも、一つ一つ説明しないとなりません。
横に長く引く線の説明も必要となります。
そう言う時に、福田理軒達が、「界の線だから、界線だ!」と固有名詞を作り出し、分かりやすくしていったのでしょう。
こういう所にも、自然と創意工夫をしたくなってくる教育者魂のようなものを感じます。
生徒への親心。これが日本の教育の力強さです。
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