夏の暑さが厳しいときは,読書も避暑中という感じで,ちょっと足が遠のいていました。
でも,一気に涼しくなり,読書が楽しくなっています。
『気 修行 身体』(湯浅泰雄著,平河出版)も実に面白かったです。
全部が全部読みこなせているわけではありませんが,なるほど!と思うところが随所に出てきます。
「はじめに」で,いきなり来ました。
東洋医学の伝統的な考え方が解説されています。
◆西洋医学でいう対処療法・・・病気になったからこれをなおす・・・じゃなくて,(東洋医学は)普通のレベルよりもっと健康の度合いを高めて,病気にかからないように,精神なり身体なりの能力をもっと高いレベルへ追求していく
姿勢の教育は,東洋医学にも通じているのかと感じ入ったのですが,よく考えてみれば,当たり前の事です。
その当たり前の事に,なかなか気がつきません。
年を重ねてからの読書は,新しい知識を得ると言うより,「自分のしてきた事(している事)への確証づくり」という面が強いです。
東洋医学の考え方は,今,大きな問題になっているいじめについての考え方にも広げたいところです。
いじめが発生したらそれなりの対処が必要ですが,「いじめにあってもへこたれない子」に育てる教育が平素から行われていたら,それはとても有り難い事になります。そういう考え方の教育を打ち立てる事が大切なのだと,東洋医学の考え方が教えてくれているように思えてなりません。
私は,それが「姿勢の教育」だと考えています。
しばらく読み進めると,日本の武道のことが記されています。
◆剣技の訓練の究極の目的は,他人に勝つためではなく,いわば自分に勝つための方法に変わってしまった・・・「殺人剣」から「活人剣」への変化
ここも,なるほどとうなります。
剣術はもともとは敵を殺す事が目的です。でも,武士はそれを超えて,「己に勝つ精神」へと目的を昇華させたのです。まさに,見事です。日本人で良かったと熱い気持ちになります。
目を転じて,教育を考えると,面白い事に気がつきます。
例えば,「競争」の善し悪しです。
競争を取り入れて成功している先生は競争が大事と言い,競争は良くないので,競争を無くす方向で成功している先生は,競争はダメと言います。
どっちが正しいのか,本を読むと迷います。
迷いが生じるのは,どっちかが正しいと考えるからです。
日本武道のように,「目的の変化」で進む方法を選べば,とくに,競争そのものには善し悪しはないことがわかります。
競争は根源的なところで,相手に勝とうとする強いエネルギーを自然に生み出させる力を持っています。でも,これは競争の持つ「生の力」 です。剣術の殺人剣と似ています。
これを日本の武士のように「己に勝つ」という「日本人(武士道)的な精神の力」へと方向を転換することが教育の大きな力と分かってきます。
そういった形で学級経営を成功させている先生が,私の身近にいます。城ヶ崎滋雄先生です。
中盤には姿勢がでてきます!
◆武術にせよ修行法にせよ,まず基本となるのは身体の姿勢である。
ここに,「教育にせよ」と入れたいと思いました。