【横山験也のちょっと一休み】№.2818
コーヒーを漢字で「珈琲」と書くことは、皆さんもご存知と思います。
その珈琲ですが、この漢字の訓読みも、なかなか凄いのです。
大漢和辞典の7巻に載っていますが、いつものようにクイズにしました。
珈は9文字。
琲は、なんと15文字にもなります。最長不倒文字数のような気もしてきます。
若い頃、喫茶店で「珈琲」の字を見たときは、なかなか上手いこと漢字を宛てていると感心していました。
加と非を見れば、「カ」「ヒ」と読め、カフェ・コーヒーにつながります。
ですので、「カヒ」をちょっと気取って、「カフィー」と言ってみたりして、一時的にバンカラを忘れ、少々いい気分になっていました。
単なる宛て字と思っていた「珈琲」ですが、実はこの漢字から大変高貴な世界が見えて来ます。
珈と琲は、ともに、「飾り」の意味を持っています。
そのことがこの漢字の訓読みに示されています。
珈の訓読みには、
「婦人の髪飾り」があり、
琲の訓読みには、
「珠を貫いて作った飾り」があります。
これはクイズの答えでもあります。
大漢和辞典には、この訓読みの後に解説が記されています。
それを読むと、単なる婦人の飾りではなく、大変高貴な御身分が読み取れてきます。
珈の解説には、
「笄(こうがい、かんざしの事)をして後に編髪(へんぱつ)の上に加へる最も立派な飾りで、珠を垂れ下げたもの。
珠の数によって尊卑を分ける。」とあります。
珈は、「最も立派な飾り」なのです。
最も立派としつつも、その中でも身分に高い低いがあると示されています。
琲には、
「㋑珠五百枚を貫いたもの。㋺珠百枚を貫いたもの。㋩珠十枚を貫いたもの。」と。
浮かんでくるのは、珠のついたかぶり物です。
中国の皇帝などの人物画を見ると、頭に冠をつけています。
冕冠(べんかん)と言います。
1本に12個の珠。それが前後に12束。
ですので、12×12×2で288個となります。
「㋑珠五百枚を貫いたもの」となると、これより多くなります。
国史大辞典で礼冠(らいかん)を引くと、
「礼服を着用した時に使用する冠。天皇・皇太子は冕冠(べんかん)。皇后は宝冠。親王・諸王・文官は玉冠。」とあります。
「婦人」「珠が500個」。
この条件となると、これは皇后様の冠、宝冠となります。
たかが「コーヒー」なのですが、「珈琲」と漢字を宛ててくれたおかげで、一杯のコーヒーに高貴な漂いが感じられてきます。
珈琲カップに宝冠姿の皇后さまを思い浮かべてみるのも楽しい一時になります。
漢字はそこに意味があり、歴史があるので、「何かいいことが隠されていないかなぁ」という道徳的な視点を持って読んでいくと、良い感じのことがつかめることがあります。
そんな時は、心が満たされていきます。
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