【横山験也のちょっと一休み】№.2662

■ 夏目漱石の『草枕』 ■

まさか、自分が漱石の小説を読むことになるとは、思ってもいませんでした。
たまたま読んでいた本に、『草枕』が一押しのように書いてあったので、少々気になり、どんなものかと読んでみました。

「草枕」の前に、短編の「夢十夜」があり、それを読んでみたら、一夜目、二夜目となかなかすごい話が書いてあり、この先どうなるのかと思って三夜目を読んだら、これが最高峰的な怪談話なのです。
文章の力だけで、ここまで表現できるのかと、驚愕しました。

そうして、肝心の「草枕」です。
書き出しがとても有名です。

山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に掉させば流される・・・

その昔、ウィスキーのCMで何度も流れていました。
そんなことが頭にあったので、詩のような調子で短い内容なのだろうと思っていましたが、文庫本で200ページ近くもある長編小説でした。
少々くじけそうになりましたが、その内容が素晴らしく、ぐいぐいひきつけられます。
古い文体なども出てきて、とても歯が立たないところもありますが、文学とはこういう世界なのかと、敬意すら湧いてきました。

本を読んでいると、時々、フッと内容から離れたことが思い浮かび、それについて考えてしまうことがあります。
「草枕」では、小学校でも教えられている「あらすじ」について、考えさせられました。
草枕のあらすじを考えても、それは内容からの逸脱でしかなく、まったくの無意味な行為と思えました。
あらすじでだいたいがわかる作品は、元々の作品が貧弱な内容なのかもしれないなとど、偉そうなことが頭に湧き上がってきます。

このひっかかりが、なんとなく、極めてぼんやりとした感覚で、算数の思考に思わぬ何かを生み出してくれるような気になっています。
それは、算数が実生活から生まれたにもかかわらず、論理としてしか成立していず、全ては頭の中にしか存在していないという不可解な現象を起こしているところと、あらすじへのショックが少し距離を置いたところで並行的に走っている気がしてきているからです。

面白い本なので、もう一度読み返してみてみたいと思っています。
文学、良いですね。

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