江戸時代の本の復刻本です。
  ようやく読み終わりました。

  算数ファンの先生には,たまらない1冊です。
  江戸時代にはほとんど使われていなかったという通説のある分数ですが,どうしてどうして,この本にはやたらと出てきます。
  どんな場面で出てくるかというと,「税」を計算するところです。

  この本は,税のことが詳しく書いてある画期的な算術書だったので,農家の人にもかなり読まれたそうです。
  それが気に入らなかった数学者もいて,農民がこの本で税を知ると,取り立てのじゃまになるとの非難も出たほど,よく売れていたのです。
  ということは,農家の人たちも分数を知っていたことになります。これは,私にとって大発見です。江戸時代までの分数が,また一つ明らかになりました。
  
  それだけではなく,計算途中に「平均」も出てきているし,「四は捨て五つ切り上げて」と四捨五入も登場します。
  その文字を見て,「四捨五上」になぜしなかったのかと疑問になりました。また,「四捨五入」より,「四出五入」の方が漢字の釣り合いが良いようにも思います。でも,そうならなかったのはなぜなのか。慣用的な面と,中国の古典の面から,読み込みを進めたいなぁと思っています。

  ここまででも,驚きの発見だったのですが,さらに,ビッグな発見がありました。
  「三ツ五分」と書いてあったのです。
  「三割五分」の事です。「割」が「ツ」なのです。
  これで,また,気になることが生まれてきました。利率の「割」と「ツ」の関係。「ツ」は元々どんな漢字だったのか。
  あれこれ,頭の中を巡りますが,「割」さがしが大きな楽しみになりました。

  算数ファンとして,実に内容の濃い本なのですが,この本,作法の流れからも実にすごいことが書いてありました。役所勤めの方々の意識の高さが感じられるのです。『明治人の作法』(文春新書)にも少し書きましたが,公共放送の取り組みに通じる流れが,この本にあるのです。

  久々の大ヒットBOOKです。時々,読み返したいです。