九州の書店で,店員さんとお話ししたときに,「面白いですよ」と一言お言葉をいただいたので,買ってみました。
和算関連の本であることは,絵柄を見れば直ぐにわかります。また,江戸時代に「算法少女」という和算書があったことは知っていましたので,読んでみました。
この本は,江戸時代に書かれた「算法少女」という算術書を中心に描いた小説です。
調べ物の本と違って,まるで江戸時代そのものに案内されたような気持ちになってきます。
よく調べてあるなと,感心したのはかけ算九九の言い回しです。
「二五の十,二六の十二,二七の十四・・・」
九九を唱える時に,「が」と唱えるこのとの他に,「の」ととなえるときもありました。こういうところは,本当に詳しい人しか知らないところなので,遠藤寛子氏はさすがだなと感じ入りました。
鋭い指摘は,後半に出てきます。
関流・最上流などと流派の揚げ足取り的論争に突き進んでしまった和算家が,もっと広い視野で算術をとらえていれば・・・・。
同業者同士は,どうしてもライバルの心が出てきます。知らず知らず,流派のようなものができて,そこを軸に考えを進めるようになります。そこを超えて進む人が,次の時代を拓いて進むのだと思います。