2022年03月22日(火)21:12:34

江戸時代の数学書『算爼』の中の算数がいいです

【横山験也のちょっと一休み】№.3278

仕事が早めに終わったので、先日、神田の古本屋明倫館で購入した『算爼–現代訳と解説』を開きました。
江戸初期の数学書ですが、算数関連のことも当時の香りが残るように載っています。

算数で「和」といえば、たし算のことです。算爼では「まぜあわするということなり」と記されています。
ただ、合わせるのではなく、「まぜる」のです。

意識が横に運ばれ、日本人としての「和」へ広がります。「和」は、ただ合わせるのではなく、まざるように合わさっていくことなのかもしれません。
辞書を引くと、「和」は「やわらぐ」とか「なごむ」という訓読みを持っています。ただ合わさるだけでなく、まざるからこそ、まざるようにして合わさるからこそ、やわらいだり、なごんだりとなっているのだと、ストンと落ちてきます。
こんなこともあり、実にいい本と感じています。

算爼は「さんそ」と読みます。
爼は神様にお供えする肉を載せる台のことですので、算爼は「数学を神様にお供えする」というような意味合いで題名としてつけられたのでしょう。
江戸時代初期に村松茂清が著した数学書です。

この本は日本の数学書として、初めて分数を載せた本と『日本数学の新知識』に紹介されていました。
そんな紹介を読むと、気になります。
どんなふうに分数を載せていたのだろうかと。
それで、先日購入をしました。

目次に「分数」と立っていなかったので、最初のページから分数探しをして楽しみました。
しかし、本文にも「分数」の文字は無く、あるのは、問題文の中に「五分ノ三」などと記されているだけでした。

ここからわかることは、次の2つです。
1、当時の識者の間では、分数という言葉と概念がまだ無い。
2、「五分の三」などの具体的分数は日常的な言葉として用いられているが、まだ数学の周辺の言葉だった。
1は「五分の三」を抽象化できていない状態にあるということになります。

この辺りはとても面白い所です。
〇いつ「分数」という用語が用いられるようになったのか。
〇なぜ、「五分の三」などの具体的分数はあまり広まらなかったのか。

算数マニアが楽しむ世界です。


分数といえば、こちらの2冊には面白い分数の授業が載っています。
「分数の紙」は、とにかくわかりやすい教材です。
算数を幅広く学んでみたいという先生にお薦めです。
この本に登場するネコちゃん、可愛いです。


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