【横山験也のちょっと一休み】№.3507

太平洋戦争真っ只中の昭和17年に発行された、『初等科算数三教師用』(文部省)に、昔懐かしい数の読み方が出ていました。

例えば、60354を読むとき、今は「六万三百五十四」と読みます。
それでも、電話などで相手にこの数を伝えるときは、ちょっと違う伝え方をすることがありました。

「六万とび三百五十四」です。
空位の0のところを、「とび」と言うことで、0が1つあることを伝えます。

このような、相手に、より正確に伝えるための読み方として、この本に2つの例が載っています。

「六万零三百五十四」
「六万とんで三百五十四」

0を「零千」ではなく、単に「零」と読む言い回し、これを読んで、「ああ、そういえばそういう言い方もあったなぁ」と懐かしく思いました。

この本は教師用の本ですので、当時の先生向けに簡単な留意事項も載っています。こういう読み方は、「人をまごつかせないための読み方である。」として、「ここでは、これを教えなくてよい。」と明言しています。

「教えなくてよい」というのは、万の位を習ったばかりなので、こういう特別な読み方を教えても、逆に混乱する可能性もあるので、今は普通の読み方で指導しましょう、ということです。

見方を変えると、例として示された特殊な言い方は、当時の先生方は日常で当たり前のように使っていたとも受け止められます。

ところで、今の若い先生は、こういう読み方を知っているのでしょうか。ちょっと気になりました。次回の「いつものジョナサン」で、若い先生に聞いてみたいと思います。

私の書いた算数の本が2冊あります。
『「夢中で算数」をつくる教材アイディア集』の1集と2集です。
これの第3集が、今月末ごろ、発売になる予定です。とても楽しみです。