【横山験也のちょっと一休み】№.3520
2枚セットの三角定規には2つの形があることは、どなたもご存じの事です。
その2つを、思い付きで「長い方」「短い方」と言い分けることもありました。
そのような、何となくの思い付きで形状を言い表していたのは、「2つのタイプに個別の名称が無い」と思っていたからです。
実際、自分の周囲でも、それぞれに固定された言い回しをしている先生は皆無でした。講座などで全国各地の先生方とも交流をしていましたが、三角定規に個別の名称を用いている先生とは出会いませんでした。
ただ、1回だけですが、どこかの研究会で、三角定規に名前を付けて呼んでいる先生がいました。「60度の三角定規」「45度の三角定規」と。
その言い方がごく自然で、「なるほど、そういう言い方もあるのか」と心に残りました。
考えるまでもなく、「長い方」「短い方」の方が、言葉が短く言いやすいのですが、この名称のもつ算数的意義は、長短となり、これは低学年の内容です。今一つ、算数が劣ります。
その点「60度の」「45度の」は、少々言葉が長くなりますが、学習中の角度を用いているので、算数的意義が的確にあるといえます。
その後、だいぶたってからですが、戦前の算数の教育書に、「60度の定木」「45度の定木」と書き分けされているのを発見しました。
あの時の先生は、戦前からあった算数的意義のある的確な名称を受け継いでいたのです。きっと、算術の経験もある大先輩の先生から直々にあれこれ学んだのだろうと思います。
今は、私が大先輩の年齢になってしまいました。古い算数を少しでも伝えられたらと思う次第です。
この本にも古い算数が載っています。江戸時代のきこりが木の高さを測るときに実際に行っていたやり方です。
江戸時代の算術書『塵劫記』に載っている方法です。子ども達に話すと、面白がって、中にはやってみる子もいました。