【横山験也のちょっと一休み】№.3524
長方形のことを、戦前の算数では「矩形」と呼んでいました。「くけい」と読みます。長方形という言葉もありましたが、学校では主に「矩形」を用いていました。
それが、戦後、長方形に変わりました。変わった理由は矩形の「矩」の字が当用漢字に入っていなかったからとのことです。
もし、当用漢字に「矩」が入っていたら、今の時代も長方形とは呼ばずに「矩形」と呼んでいたことになります。
その矩形ですが、私たちは「矩」の字を普段使わないので、どういう意味なのかピンときません。そこで、辞書を引いてみたら、「矩」の訓読みに「さしがね」とありました。差金というのは、大工さんが使っているL字型の定規のことです。直角に折れ曲がった定規です。
ということは、矩形は差金のような形、つまり、「直角でつくられた図形」ととらえることができます。今風に書くと「直角形」というところです。
矩形を直角形とイメージしてもらうと、正方形と矩形の集合関係がとても分かりやすくなります。
「正方形は矩形の仲間」つまり、「正方形は直角形の仲間」ということです。
ところが、今は、長方形を用いているので、正方形との集合関係がイマイチになっています。
「正方形は長方形の仲間」となるのですが、そのように言われても、どうにもスッキリしません。定義から考えれば、確かに「正方形は長方形の仲間」と理解できるのですが、だからと言って、正方形を見て「これは長方形です」とは言い難い気持ちになります。生活の中で使っている「長」の字が大きな抵抗感を与えてくるからです。
論理的に非常にすっきりしている算数なのですが、用語にまつわる生活感が、微妙に算数ヘの抵抗を示すことがあるので、算数もなかなか面白い教科だと思っています。
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下の3冊は論理的な面白さもありますが、全体としてユーモア的な面白さが色濃い楽しい算数の本です。