【横山験也のちょっと一休み】№.3621
家にある戦前の算術書をちょっと開いたら、なかなか面白いことに気が付きました。
上は藤澤利喜太郎の『算術教科書 下巻』(明治29年、大日本図書株式会社)からの引用です。
戦前の算数も好き!という先生には、藤澤利喜太郎というお名前にグッと来た事かと思います。超有名人です。戦後の本でも、算数数学の歴史を記した本には必ずと言っていいほど登場する偉い先生です。
私が面白いなぁと感心したのは、数字の書き方です。
4は下にはみ出し、8や6は上に飛び出し。
1には飛び出しがありません。
これって、アルファベットのように見えます。
明治になり日本に英語がどどんーと入り込みました。時を同じくして、西洋の算術も入ってきました。
明治初期の算術書を開くと、その数字はアルファベットの筆記体となっています。西洋から伝わった数字、つまり、アラビア数字や算用数字と言われている数字は、まさにアルファベットだったのです。
そのアルファベットタイプの数字が活字にもなり、明治29年発行のこの本で使われていたのですから、アルファベット筆記体タイプの算用数字は結構息長く使われていたと分かります。
とはいえ、この本は教師向けの教育書です。
子ども達もこのように書きますよと教わったと思うのですが、うまくかけたのか気になります。
スマホがあれば記録写真も残りますが、そういう記録媒体が無い時代ったので、神のみぞ知る世界となっています。だから逆にあれこれ想像する楽しさが算術にはついて回っています。これも戦前の算術の面白いところです。
そうそう、算術の時代の算術の勉強の基礎は数字を正しく丁寧に書くことです。算数の授業でも「数字は丁寧に」と心掛けるだけで、学習効果が高まると思っています。
下の本にはこういう話は載っていませんが、なかなか面白い内容が載っています。