【横山験也のちょっと一休み】№.3592

2年生のたし算のひっ算です。
一の位をやり終えたところです。

このように書く子はそんなにいません。「どことなくおかしい」と子どもでも感じるからです。
どうして、「ちょっとおかしい」と感じるのかというと、1マスに2つの数字を入れ込んでいるからです。

1年生の時から、1マスに1つの数字と教えられてきているので、左のように1マスに「13」と書いたら、不自然さを感じます。
まあ、原稿用紙の1マスに「アメ」などと書いたら、それはダメだろうと感じるのと同じようなものです。

方眼ノートの使い方として確立されている、「1マス1字」という暗黙の決まりは、繰上りのあるたし算の指導に大いに役立ちます。

ご覧のように先生が書いて、「いいたし算ができました」と、満足気な顔をしていればいいのです。
誰ともなく、手を挙げてきたり、声を出してきて、子ども達の方からあれよあれよと正しいやり方に導いてくれます。
その皮切りが、「13ってそこに書いたらおかしい」という声です。

そうしたら、「どうして」とすぐに聞いてもいいですが、そこに気づかない子もまだいるので、ちょっと「溜め」をつくります。「5+8は13だから、合ってるじゃん!」と、これで十分ですが、少し遊んで「それとも君は14だとでもいうのかね」などと、とぼけるのも楽しいです。

「溜め」ている間に、「13を1マスに書くことは絶対におかしい」という雰囲気が教室中に蔓延します。これが大事です。「先生が書いたやり方は、絶対に違う!」という強い意識になるからです。間違え表記を間違えとしてハッキリ自覚することは、正しいやり方を会得するときにとても重要だからです。

盛り上がってきたところで、「じゃあ、どうしたらいいんだ?」とわけを聞いていけば、「13の『じゅう』は『じゅう』だから『十の位』」などと、位取りを正すことが大切と話してくれます。少々、言葉が稚拙でも「おお、なるほど」と感心して聞けば、正しいやり方にたどり着きます。

こうして正しいやり方を学ぶと、子どもというのは実に不思議な思考をします。
最初、ぼんやりしていた子も、「ぼくは最初から分かっていた」という気分になるのです。
自己満足というか、調子がいいというか、あやふやだった自分をあっさりと無かったことにしていきます。見事な心の転換です。たくましいです。私は、子どもたちのこうしたたくましさが大好きでした。

下の3冊は、私の書いた算数のアイディア集です。なかなか面白いです。