【横山験也のちょっと一休み】№.2815

そろばんの話を一つ。

このそろばんは、神保町にあるちょっとマニアックな古本屋で購入しました。

今はもう、その古本屋は閉じてしまいましたが、店でパッと見て、文句なく良いと思い、値切り交渉をしたことを覚えています。

5珠が2つ。
1珠が5つ。
梁の文字もキッチリしています。

文献でこの手のそろばんの存在は知っていましたが、なかなか現物にお目にかかることはありません。
京都で1回見つけて購入していましたが、神保町でも購入しました。
こういうところに、算数マニアが出てしまいます。

現物は不思議な力を持っています。
興味の湧き方がドーンと高まるのです。

ずっと気になっているのは、「5珠2つをどう使っていたのか」です。
江戸時代は1両が4分、1分が4朱だったので、1両=16朱となり、その計算のためかな・・・と思ったのですが、それだけのためのそろばんではありません。

実際、梁の所には、町・反・畝・歩の漢字が書かれているので、これは土地の計算をする時に使っていたとわかります。

結局、今も5珠をどう使っていたのかは、私は理解できていません。

同じようなそろばんがお隣の国、中国にもあります。
こちらは、中国へ遊びに行った時に雑貨店で購入したものです。
お店の人が使っていたので、それを売ってくれと言い、購入しました。
そのとき、どう使っているのかも聞けばよかったのですが、買うことで頭がいっぱいになっていました。マニアの弱点です。

中国のそろばんは、珠が丸くて大きく、桁の長さも長いです。

そろばんは戦国時代に中国から伝わり、その後、日本人ならではの改良が進みました。
珠の形が円形からトンガリ系に、形も小さくなりました。
桁の長さも短くなりました。

明治に入ると、西洋から入ってきた筆算との計算スピードを競うことになり、そろばんは5珠が1つになり、さらに、第二次世界大戦での物資不足もあり、今の4珠そろばんになっています。
日本のそろばんは、歴史の中でもまれて、現代の凛とした姿になったのです。

文献を読むと、日本のそろばんの方が素早くパチパチできると、実用面での優位性がよく書かれています。そういう記述に触れると、戦国時代からの歴史の重みを感じてしまいます。

さて、この5珠が2つもあるそろばんですが、実際にどう使われていたかはわからないとしても、算数教育ではとても重宝します。
それについては、またの機会に記したいと思います。


この本には算数のアイディア手づくり教材が載っています。
往年の先生方には「知っているよ」という内容もあれこれ載っています。
若い先生方には古すぎて目新しいようで、好評です。
面白そうな手づくり教材が見つかったら、ぜひ、教室で使ってみてください。

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