『小学作法 尋常科第二学年』木更津で話した「卒業式の作法 儀式とは何か」を受講していた山﨑先生から,「事前学習法研究会」に投稿がありました。
一部,引用します。お読み下さい。
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横山先生から卒業式の指導について教わったので、学年集会を開き、卒業式の練習に向けた事前学習を1時間やりました。
目的は、
①卒業式の練習に向けての心構えをもたせる
②卒業式の練習がはじまる1か月後までの間に自分が準備しておかなければいけないことは何かを自覚させる
この2つです。

体育館に120名の6学年児童全員を集めました。
はじめに、小学校生活最後のゴールとは何かを確認しました。
もちろんみんなが「卒業式」と答えました。
そこで、
「最高の卒業式にしたいか、したくないか」
の二択で子供に挙手をさせました。
全員「したい」方にあげました。
そこで、担任の思いも伝え、みなさんと担任の思いは同じであることを確認しました。
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卒業式の練習を成功させるか,普通程度に終わらせるかの大きな分かれ目が,上記に記されています。
それは,最高の卒業式にしたいか,ぬるい卒業式にしたいか,これを子供達に選択させていることです。
「価値ある選択」といいます。野口先生から教わっている根本本質原点の指導です。

この事前の価値ある選択が,なぜ重要なのでしょう。
この選択がないと,この先の指導は基本的に教師が引っ張り続ける事になります。返事はこうする。姿勢はこうする。声はもっと大きくハッキリと・・・。教師が望む姿形を示し,そこに向かわせる授業になります。
子供達の心がどこに位置しているのか不明瞭なため,心の持つエネルギーと先生のエネルギーとがシンクロしづらいのです。

価値ある選択をした子供達は,最高を目指す側に位置しています。この立場を定めていることが,重要なのです。
最高を目指す陣営に所属しているので,自分から最高を目指したい,最高を目指すぞ,という強い気持ちを持って,練習に臨めます。
みんなが同じ陣営なので,友達全体と大きなチームを作って前進させることもできます。

学ぶ側の子供達の立ち位置がエネルギーを大きく増大させているので,「最高の返事を考えてみよう」と小さな投げをしても,子供達は力を発揮してきます。その流れに乗りながら,先生は知っている限りの技術指導を付け足していくことができます。

この「価値ある選択」は,善と悪のどちらにキミは立つのかと選択をさせる場面です。
余裕がある時には,悪の側(ぬるい卒業式)の甘味を話すこともできます。
ぬるい卒業式なら,練習は簡単だ。努力もたいしていらない。早く練習が終わるので遊ぶこともできる。
こんな風に,悪の方向の甘~い,甘~い世界の話もして,さらに,最高の卒業式の持つ大感動や一生懸命にやらなければならないといった善(最高)の話もして,どちらを選択したいか聞くこともできます。

子供達は甘い方を選びません。努力して何かを得ることに価値を見いだせるだけの力を持っているからです。それを支えているのが「善の側にいたいという心」です。
これが「成長の原動力」となるのです。
ですので,事前の「価値ある選択」は,遊びたいとか,気楽にやりたいといった,怠惰な心に打ち克つ道徳の学習にもなっています。
道徳は,典型的な善と典型的な悪があり,そのどっちの側に自分が居続けたいか,どっちの世界で生きて伸びていきたいか,という学習です。

事前に価値ある選択を行った山﨑先生の学年。卒業前の道徳心も高まりました。
小学校生活,最後の最大の行事をこういう風に迎えられるのは,幸せですね。
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画像は,戦前の卒業式風景です。学年が終了する毎に,卒業証書をいただいていました。明治時代には,学齢になっても入学できなかった子が,一生懸命に勉強をして,2学年分まとめて卒業証書をいただくこともありました。
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