明治16年の文部省編纂の教科書『小学作法書 巻之一』です。
この当時は,まだ国定教科書ではなかったので,御上に申し出てOKが出れば,教科書として使えました。
その中に,作法の教科書もあり,修身の中の一つとして勉強しましょうとなっています。
「巻之一」ですから,1年生が使う作法の教科書です。
でも,一年生の子に,この教科書を読ませていたとは,とても思えません。
いきなり漢字漢字の連続で,しかも,変体仮名文字もでてきます。
今の大人も,読みでちょっとつっかえると思います。
1年生には無理ですね。
この教科書,先生が持って,ここに書いてあることを読み上げたり,塗板(今の黒板)に書いてたりして,教えていました。
それにしても,書き出しは実に良いですね。
「人の子たるものは」
ですよ。
ちょっと付け加えるなら,
「そもそも,人の子たるものは」
となります。
大元・根っこから語り始めています。
大上段から,エイッ!とばかりに,振り下ろすスタイルでもありますね。
このスタイルは,「要するに,こういうことがスタンダードですよ!」と教える指導にはぴったりです。
朝起きたとき,夜寝るとき。
必ず父母のご機嫌をうかがいましょう,と示しています。
これ,良いですね。
今の時代は,「おはようございます」「おやすみなさい」と挨拶をします。
でも,明治初期の頃は,父母に「ご機嫌いかがですか」などと,もう一言加えていたことがわかります。
父母が安心の気持ちでいるかどうかをお伺いする事が,朝晩における子どもの本分だったのです。
それが,次第に,挨拶すらしない子が増えています。
この「機嫌を伺う」という感覚がわかる子は,もういないかもしれませんね。
父母を一番大切にするという教え。
親孝行の教えです。
しっかり子らに伝わってほしいですね。
2番目も良いですね。
どこへ行くにも,必ず,父母に行き先を言ってから,出かけるのですよ,と教えています。
これ,「事前学習法」に通じます。
予め,告げておけば,心配がぐっと少なくなります。
「父母に心配をかけない」「両親を安心させる」
これは,他の人ではできません。
子どもだけができる心配りです。
これがわかる子は,自分がしっかりする方向に育っていきますね。
明治16年の作法書,滑り出しは,「親孝行」がテーマです。
すばらしいです。