【横山験也のちょっと一休み】№.3302

丸谷才一の本を読んでいたら、谷崎潤一郎の『蓼食う虫』に出てくる手紙が「本物の手紙」とあり、そういう手紙はどのように書かれているのか気になり、注文をして読んでみました。

たくさんの手紙が載っている小説であろうと期待していたのですが違いました。手紙がどこに書いてあるのか、俄かにはわかりません。
やむなくでもあり、せっかくの谷崎だからと、読んでみると、その書き出しからいきなり現場に引きずり込まれ、読み耽りました。

途中、目的であった手紙を読んだのですが、読み終わっても読み返すことをせずに、先を読み進めました。
こういう作品は素晴らしいです。

終盤に近付いたので、一息ついて手紙を読み直しました。
「確かに、これは手紙だ」と。
繰り返しつつ読んでいる内に、手紙の手紙らしさのようなものを感じました。
「作品に酔ったな」と気まずさを感じたのですが、翻って、自分が書いているメールがいかにも仕事メールと思え、猿でもできる程度ですが反省したところです。

国語については、野口芳宏先生の教えは尊いです。

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