【横山験也のちょっと一休み】№.2956

on-line野口塾で野口先生の御自宅へ伺ったときのことです。
たまたま、国語教材でアンパンマンの話が資料として出されていました。
何気に、その作者名を見たら梯 久美子とあります。
非常に感動しました。
梯(かけはし)さんを知っているということではありません。
「梯」という漢字が、算数に大いに関係のある、しかも高度にレアな漢字だったからです。

左の画像に、「梯形の面積」と書いてあります。
これは昭和4年に発売になった『回転式 算術早分かり法』という教材の一部分です。
梯形の面積はこうすれば簡単に求められるますよと示されているわけです。
今風に言えば、算数の要点整理のような教材です。

「梯形」をどう読むのか、100%の自信で読める先生はそんなにいないと思います。
弟が書いてあるので、推量して「ていけい」となるのですが、その読みで正しいです。
読めても、今度は意味が通じません。
「梯形」という算数用語がすでに辞書内だけに存在している絶滅用語となっているからです。

「梯」は「はしご」のことです。植木職人が使うような、下が広く上が狭くなっている梯子(はしご)です。
画像を見れば、梯子の中に台形がたくさん見えてくることがわかります。

戦前は「ていけい」と教えていたので、先生方は、黒板に植木職人の梯子をササッと描き、その一部を示しながら、「これが梯形ですよ」と教えていたのだろうなと思います。
私のように、ちょっと変化球を投げるのが好きな先生は、「この梯子の中に梯形が何個見えますか?」などと聞いていたかもしれません。

野口先生に、梯形のことをお話したら、野口先生がとても貴重なことをお話しくださいました。
「私は梯形で教わり、教師になり台形で教えた」
野口先生は小学校4年生の時に終戦を向かています。
教わった時と教える時では、日本政府のあり方も、文部省のあり方も様変わりしてます。
良い話を伺えたと、さらに大感動しました。

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