【横山験也のちょっと一休み】№.3462

数学の一般書を読むと、内容の難しさに撃沈しつつも、その世界の大きさ、考え方のミラクルさに感動しています。
また、一方で、古い算数の本を開いると、そこでは「算数歴史探検」の雰囲気になり、自分は探検隊の隊長なのかもしれないと、楽しい気分になっています。

せっかく、いい気分になっていたので、覚えたてのイラレの3D機能を使って、「算数歴史探検隊くん」を作ってみました。

頭にハチマキ。
胸に「M」。mathematicsのMです。
顔は、ほんの小さな発見に「わーお!」と喜んでいる様子を表しています。

簡単に作った「算探くん」ですが、なかなかいい感じにできました。

では、さっそく「算数歴史探検」を1つご紹介しましょう。

算数歴史探検_Vol.1
  わり算の「心持ち」

昭和10年の算術書『覚えやすい 算術の講義』(根津千治著、荻原星文館)を読んでいるのですが、著者の根津先生、意外なところにこだわりを持っている先生のようで、「オッ!」と思う記述と出合います。

その一つが、「÷2桁」の「心持ち」です。
次のように根津先生は記しています。

35で割るときには、
35×何百、
35×何十、
35×何
と、分解して考えて行けばよいと伝えています。
この後で、わり算の筆算について述べていますが、筆算に慣れた私の感覚では、「8645÷35」を筆算するときに、何百を意識することが全くありません。「86に35がいくつあるか」と、筆算をする上で分けた部分的な数のわり算として頭が働きます。

これは、245×72を筆算するときに、200×2や、200×70を意識しないのと同じです。
しかしながら、かけ算のひっ算では、245×70と245×2と分解して教えています。そのように分けることが、筆算の仕組みを見せていくのに向いているからです。

ところが、わり算の筆算では、8600÷35という見せ方はしません。「86÷35と考えて」と進んでいきます。

ちょっとした違いなのですが、ここは面白いです。
・かけ算のひっ算は、数のしくみから筆算を説明した方が分かりやすく、
・わり算の筆算は、数を表記から分割して説明した方が分かりやすい、
というような違いが見えてきます。

要するに、発達してきた筆算の形状に合わせて、それを説明しているということになります。
これは、至極当然のことですが、その当然性に気づけたのは、根津先生がわり算のひっ算を、数のしくみから説明していたからです。そういう「心持ち」でわり算の筆算を見るんですよと、筆算でも、数のしくみにこだわる根津先生の着眼、いいですね。おかげで、わり算の筆算が、数の仕組みを度外視するところまで発達した筆算であることを理解できました。

マニアックなところですが、この「算数歴史探検」とてもいい気分になりました。

『「夢中で算数」をつくる授業アイディア集』は、第2集まで発売されています。
今年の4月か5月ごろには、待望の第3集が出る予定です。
第3集はかなり面白い算数のアイディアが満載です。ご期待いただけたらと願っています。


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